今、物流業界で必ず出る話題は「2024年問題」です。
メーカー様、問屋・小売り様には耳馴染みの無い方が居られるかも知れません。
今後、「商品が運べなくなる日が来るかも知れない」とまで言われている
この問題ですが、いったい何が問題で解決の糸口は何処にあるのか、
簡単にまとめてみましたので、3分ほどの間お付き合いください。
「時間外労働の上限規制」
自動車運転業界は、急な是正が難しい事から猶予期間が設けられていましたが、2024年4月から「時間外労働時間の上限規制」が施行されることで、「2024年問題」として各所で取り上げられる事となりました。
基本的な事からおさらいしてみましょう。
労働基準法第32条では法定労働時間として、
・一日8時間まで
・一週間40時間まで
これを超過した時間が「残業時間」とされます。この他一般的に下記の規制があります。
・年間720時間以内(休日労働を含まない)
・単月100時間未満(休日労働を含む)
・2~6ヶ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
これら一般規則と異なり、自動車運転業務では、年960時間(休日労働を含まない)が労働時間の上限となります。つまりドライバーは「法定労働時間+年960時間」の範囲内であれば働くことができることになります。
また、これとは別に、トラック運転者には「よんさんまる」という制度があります。連続して運転できる時間は4時間までと決まっており、4時間運転した後は必ず30分の休憩時間を取らなければいけません。
「月60時間超の時間外労働の割増賃金引上げ」
2023年4月から中小企業を対象に月60時間超の時間外労働への割増賃金率が50%とされており、トラックドライバーに対しても同様に適用されます。
月60時間までの時間外労働については割増賃金率25%で構いませんが、これを超えると一人当たりの人件費が格段にアップするため、拘束時間が長くなる運行計画ではコスト増に注意する必要があります。
厚生労働省が提供する「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」によれば、先の「時間外労働の上限規制 」に関するルールに違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあるとしています。
関連リンク↓
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html
「物流業界が抱える問題」
「時間外労働の時間が制限される」=「一日に走れる距離が短くなる」ことで、様々な問題が発生します。連続運転の後の休憩場所の確保や、一日で運べる距離が制限されることからリードタイムにも変更が出る可能性があります。睡眠時間の為の休息施設や、関東・関西・九州などエリア間でのパートナー企業の確保も必要になってくる可能性があります。
また、それ以上に心配なのはドライバー不足です。
まずは、どれだけ人手が不足しているのかトラック運転手の有効求人倍率を見てみましょう。厚生労働省・国土交通省によると、トラックドライバーの有効求人倍率は全職業の平均よりも約2倍高い数値を示しています。
また、全日本トラック協会の「景況感調査」では、「トラック運送事業者における労働力の不足感は強い状況」にあり、多くの事業所で人手不足が問題となっているとしています。
それに加えて、トラックドライバーの平均賃金の低さも慢性的なドライバー不足に拍車をかける要因となっています。
資料:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より
このように、
・残業時間上限制限により、一日に走れる距離が短くなる。
・残業が月60時間を超える運行計画はコスト高になる。
といった制度の変化に加えて、かねてからのドライバー高齢化や若年層の入れ替えが進まずにドライバー不足が加速しているといった問題に、燃油高による原価高騰といったマイナス要因が重なり、運送業界は非常に苦しい時代を迎え、中小零細事業者が淘汰される事により「モノを作っても運べない時代がくるのでは」との不安もささやかれています。
以上、今回は「2024年問題」の問題部分を簡単にまとめてみましたが、次回はこの問題の解決の糸口は何処にあるのかを探っていきたいと思います。